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（３） 上泉信綱は室町幕府奉公衆であった |
御所（将軍邸）内大名衆の服装
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大名並びに外様衆鳥帽子、上下 |
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「上泉信綱の上洛の経緯」でも論考しましたが、柳生家伝承で誤伝の最たる箇所の一つは、 |
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「上洛の途次、伊勢国国司北畠具教卿の紹介で宝蔵院及び柳生へ道を辿った。」との件です。 |
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抑々永禄の初め松永久秀が大和国に進攻した際に柳生一族は既に松永久秀麾下であった事 |
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は周知の事実でした。松永久秀は大和国進攻で南北朝以来北畠氏の勢力範囲である宇陀郡 |
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へも進入しています。宇陀郡の国人秋山氏はこれまでの北畠氏への服属から松永久秀へ変 |
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節してしまったので国司北畠具教卿は秋山氏以外の宇陀郡の国人、沢氏や芳野氏等へ松永 |
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久秀には充分注意する様に書を認めています。大和国宇陀郡は大和国の東南に位置し、東 |
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の隣地は伊勢国一志郡で、北畠氏の多芸御所のある本拠地です。永禄の初めの此の頃、北 |
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畠氏と織田信長とは既に戦闘状態であり、織田信長の陪臣の又陪臣である小柳生の柳生氏 |
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と兵法談義を興じている程悠長な時期ではありません。柳生家伝承は小説と同様の作り話 |
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である事は明らかです。それでは上泉信綱は如何なる人脈を辿って畿内周辺で活動したの |
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でしょうか。その有力な手懸りが室町幕府奉公衆です。 |
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「室町幕府奉公衆とは」 |
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（イ） 室町幕府将軍の権力の維持強化目的で、将軍への御目見以上の直勤御家人と奉行 |
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人で設置されました。 |
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（ロ） 奉公衆の構成は足利一門及守護大名の庶流足利氏重代の被官人、有力国人領主が |
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主力です。 |
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（ハ）「奉公衆」の制度は室町幕府開府の「当参奉公人」等と呼ばれ、鎌倉幕府の「小 |
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侍」管下の「御所内番衆」等の制度を受け継いだと思われます。将軍義教の初期に組 |
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織の強化が計られ応仁の乱以降も将軍親衛軍として機能を果たしました。 |
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（ニ） 奉公衆の番所属は家毎に殆ど固定され、各番衆は強い連帯意識を醸成されました。 |
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（ホ） 奉公衆は本貫地の他に室町幕府の御料所を預け置かれ幕府の経済基盤を支えまし |
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た。有力国人領主の奉公衆は地方に於ける将軍権力の拠点でもありました。番を結ん |
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で在家奉公を行い家臣を率いて地方と都を行き来した奉公衆は地方への文化伝播者で |
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もありました。洛中に屋敷地を給与されていたことも考えられ将軍御所の移転は周辺 |
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の洛中屋敷等が再開発されたらしい事が解っています。（以上、「福田豊彦 室町幕府 |
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の奉公衆体制」「国史大辞典」等に依る。） |
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（１） 「永禄九年二月晦日雲林院弥四郎入道宛疋田豊五郎新當流兵法起請文」と「関東幕 |
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注文」で「箕輪衆」に「引田伊勢守」の名が見受けられる所から一族と思われます。 |
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「伊勢守」を名乗っている事から「伊勢国疋田氏」との縁があるのではないかと伺 |
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う事が出来ます。伊勢国の疋田氏は室町幕府開府以来伊勢国有力国人として奉公衆 |
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に抜擢された名族で北畠氏（木造家）の与力でもありました。伊勢疋田氏の所領は |
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伊勢国多気郡三疋田四疋田の本拠地の他、三河国設楽郡及び越中国田中保をも含ん |
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でいたと云われます。 |
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（２）一方疋田豊五郎の師匠雲林院氏は伊勢国国人長野氏と同族で（鎌倉以来の御家人、 |
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工藤祐長の長男、大和守が長野城を二男出羽守が雲林院城を相続したと云われてい |
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ます。）九代目工藤高景と十代目工藤祐重は足利尊氏の配下で、手柄に依り足利氏の |
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定紋「丸に二つ引両」の使用が許可が与えられていた程伊勢国有力国人であり、や |
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はり室町幕府奉公衆に取り立てられていました。勢州軍記に「長野輝伯の事」とし |
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て次のような記述が語り継がれて来ました。「其の頃（永禄の初め）長野輝伯は長野 |
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家の末子なり。彼の舎兄長野三郎は幼少にて京都普広院にあり。時に公方の寵臣伊 |
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勢守普広院に来り、鞠を蹴り足を洗いて、明衣（白衣・ゆかた）を請う。長野三郎 |
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之を持ち来たりたれば、伊勢守足を拭えと謂う。三郎奇怪の者と謂いて刀を抜きて |
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伊勢守を斬り殺し自害し畢ぬ。生年十六才なり。故に其の弟、輝伯長野家を嗣ぐ。 |
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而して名将なり。」此の勢州軍記の記述は地方有力国人の子弟教育が如何にして行わ |
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れて来たかを知りえる貴重な史料です。南北朝期楠正成が幼少期河内観心寺で滝覚 |
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坊に師事していた事は有名です。室町期に於いては五山の末寺等で子弟教育がなさ |
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れ武将として備わるべき知識が施されていた様子が伺えます。 |
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普廣院 |
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雲林院氏と同族長野氏の子弟が「奉公衆」に上る迄行儀見習い等子弟教育がなされていた普廣院
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（３)言継卿記で上泉信綱が元亀元年八月十日「千秋刑部少輔大胡武蔵守参へいはう被御 |
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覧」八月十九日「千秋大胡鈴木等兵法有之、各見物了。」此拠に登場する「千秋刑部 |
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少輔」は「三番」「五番」に名を連ねた「奉公衆」の最右翼の一族です。元亀元年十 |
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月二十二日大胡武蔵守来談、奉公衆先日宇治迄出陣云々・・・三牧之城取之云々今 |
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朝又奉公衆尾張衆木下藤吉郎山城へ出陣云々は奉公衆の動向を上泉信綱が知り得る |
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立場にあった事が解り奉公衆と強い係わりが伺えます。又、「氏隆流軍配」即ち小笠 |
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原氏隆の「訓閲集」の講義は上泉信綱が奉公衆であった際、伝授されたとするのが |
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最も妥当ではなかろうか？（小笠原氏隆の訓閲集は鉄砲の威力を活用する、当時最 |
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新戦略が特徴です。一方、永禄の初めの頃迄上野国周辺では鉄砲は未使用。） |
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